リップスライム現在と脱退の真相、あの天才5人が辿った光と影
リップ スライム メンバーが日本のポップシーンを痛快にハックしてから、すでに四半世紀近くの歳月が流れた。軽快なライムとキャッチーなフック、誰もが口ずさめるファンキーなグルーヴ。彼らが提示したスタイルは、アンダーグラウンドの美学に固執しがちだった当時のストリートカルチャーを劇的に塗り替え、お茶の間のど真ん中へとラップミュージックを連れ去った。だが、時代の熱狂が過ぎ去ったあとに残されたのは、あまりにも人間臭く、そして切ない摩擦の爪痕だった。
表舞台から突如として姿を消し、活動休止とメンバーの離脱劇が繰り返された混乱期を経て、かつて栄華を極めたリップ スライム メンバーそれぞれの関係性や現在の動向には、今なお音楽ファンの熱い視線が注がれ続けている。華やかなメガヒットの裏側で、いったい何が起きていたのか。あの夏を彩った5人が辿り着いた現在地と、長年伏せられてきた真実を検証する。
脱退騒動の真相と亀裂:PESとSUがグループを離れた理由
RIP SLYMEが事実上の機能停止に追い込まれた発端は、2017年に報じられたSUの私生活をめぐるスキャンダルだった。グループは活動休止を余儀なくされ、翌年には公式サイトが突如閉鎖。当時のファンに走った激震は記憶に新しい。しかし、真の崩壊は外部からのバッシングではなく、内部の修復不可能な溝から生じていた。
決定打となったのは、メロディメーカーとして中核を担っていたPESの告白だ。彼は後に自身のSNSで、グループ内における長年のいじめや孤立、不公平な関係性に耐えかねて2017年の段階で精神的に限界を迎え、脱退を決意していたことを赤裸々に明かした。さらに、残るメンバーとの対話を試みながらも拒絶され続けたという告発は、音楽業界全体に小さくない衝撃を与えた。
SUの不祥事によって表面化したグループの足並みの乱れは、実際には長年積み重なった感情の歪みだったのだ。互いに若く、無邪気な仲間意識だけで駆け抜けた青春時代が終わりを告げ、利害関係とエゴが絡み合う中で、かつての絆は修復不能なまでにすれ違ってしまっていた。
黄金期を築いた革命:『TOKYO CLASSIC』と『楽園ベイベー』の爆発力
彼らが日本のヒップホップシーン、ひいては日本のポピュラー音楽に残した功績まで否定されるべきではない。メジャーレーベルであるワーナーミュージック・ジャパンから放たれた名盤『TOKYO CLASSIC』は、日本のヒップホップアルバムとして史上初となるミリオンセラーを達成。その金字塔の中心に君臨したのが、不朽のアンセム「楽園ベイベー」だった。
当時の音楽業界は、ハードコアな不良性やリアリズムこそがラップの至高とする風潮が根強かった。そんな空気を、彼らは笑顔とアロハシャツ、そして洗練された都会的センスであっさりと打ち破ってみせたのだ。ヒップホップを「誰もが踊れるサマーチューン」へと昇華させた功績は、間違いなく彼らだけのものだった。
巧みなマイクリレー、天性のポップネス、そして圧倒的な親しみやすさ。彼らはカルチャーの門戸を全開放し、J-POPの歴史そのものを鮮やかに書き換えた。
3人体制での再始動:RYO-Z、ILMARI、DJ FUMIYAが守り続ける看板
激動の空白期を乗り越え、グループは2022年にRYO-Z、ILMARI、DJ FUMIYAの3人体制で本格的な活動再開を果たした。5本あったマイクのうち2本が失われた事実は重い。だが、グループのフロントマンであり続けたRYO-Zの力強い牽引力、ILMARIの漂わせるクールな佇まい、そして屋台骨であるDJ FUMIYAの革新的なトラックメイキングは健在だった。
新生リップとして配信シングルを次々にリリースし、精力的な全国ツアーや大型フェスへの出演を敢行。彼らが選んだのは、過去の栄光にすがるノスタルジーではなく、現役の表現者としてビートに身を委ね続ける泥臭い道だった。客席を煽り、汗を飛び散らせながらステージに立つ3人の姿には、看板を守り抜くという覚悟が静かに宿っている。
別々の道を歩むPESとSUの現在地:それぞれのソロ活動と表現の場
一方で、グループの輪から完全に外れた2人もまた、立ち止まってはいない。PESはソロアーティストとして独自の世界観を切り開き、自身のレーベル運営や他アーティストへの楽曲提供、プロデュースワークに情熱を注いでいる。グループ時代に見せた卓越したソングライティング能力は、アコースティックかつメロウなソロ作品において、より純度の高い形で結実している。
SUもまた、表現の世界から去ったわけではない。紆余曲折の末にDJとしての活動を再開し、舞台やナレーション、ファッション関連など、持ち前のハスキーな低音ボイスと独特の存在感を活かした場へと活動の幅を広げている。二度と交わることのない軌道を描きながらも、それぞれが己の足で表現の地平を踏みしめているのが現実だ。
ストリーミング時代の再評価:SpotifyやYouTubeで鳴り響く色褪せないサウンド
かつての騒動を知らない若い世代の間で、彼らの名曲がデジタルネイティブな形で再発見されている現象も興味深い。SpotifyのプレイリストやYouTubeの公式チャンネルを通じて、「熱帯夜」や「黄昏サラウンド」といった楽曲が、往年のファンのみならずZ世代の日常にシームレスに溶け込んでいるのだ。
早すぎたシティポップの先取りとも言える洗練されたアレンジと、憂いを帯びたリリック。消費され尽くしたはずの楽曲群は、アルゴリズムの海を軽やかに泳ぎ渡り、国境や時代を超えて新しいリスナーを獲得している。どれほど人間関係が壊れようとも、一度レコードに刻まれた音楽の輝きだけは決して損なわれないことを、デジタルの数字が証明している。
日本のヒップホップ史における孤高の遺産とこれからの展望
5人が揃った「完全体」の復活を夢見るファンの声は、今なおゼロにはならない。だが、互いが傷つけ合い、痛みを抱えながら選んだ現在の距離感こそが、彼らにとって最も誠実な結末なのかもしれない。無理な和解劇を演出するのではなく、それぞれの人生を全うすること。それもまた、大人になったクルーのリアルな生き様だ。
日本のストリートカルチャーを大衆音楽の頂点へと押し上げた偉業は、今後も色褪せることはない。傷だらけになりながらも看板を背負い続ける3人と、そこから飛び出し自らの音を鳴らす2人。彼らが紡いできた数々の名曲は、それぞれの未来を照らす灯火として、これからも街のどこかで鳴り響き続ける。 (出典: リップ スライム メンバー(Yahoo!ニュース))